2024年に国内のAmazon unBoxedイベントで注目を集めたのは、Amazonが上位ファネル(購買前の認知段階)への広告参入をより簡単にしようとしている点です。特に、Prime Video TVやストリーミングTVを活用した広告が注目されました。
皆さんもご存じのとおり、Amazonは2024年からPrime Videoに広告を導入し、日本でも2025年4月から開始する予定ですが、メーカー及びブランドにとって最も大きなニュースは、ストリーミングTV広告をすべてのブランドに提供するということではないでしょうか。
スポンサーTV広告は、スポンサープロダクト、スポンサーブランド、スポンサーディスプレイ広告と同様に、広告費の最低利用額の制限なしで利用できる新しい広告フォーマットです。すでに使っている方も多いと思いますが、アドコンソールから簡単に利用できます。
スポンサーTV広告が表示される場所:
- Freevee(Amazonの無料ストリーミングサービス)
- Twitch(ゲーム配信プラットフォーム)
- Amazon Fire TVのアプリ内
これまでアメリカでは、AmazonでTV広告を配信するにはDSPを利用する必要がありました。しかし、DSPは代理店を利用しない限り、最低でも数万ドルの広告費が必要でした。
スポンサーTV広告なら、こうした高額な広告費のハードルを気にせず、誰でもストリーミングTV広告を出せるようになります。つまり、中小ブランドもTV広告を活用できる時代が到来したのです。
Amazonの広告テクノロジー・製品開発部門のVPであるルスラナ・ズバガースカ氏も次のように述べています。
「スポンサーTV広告はブランド構築戦略の重要な要素です。この広告を通じて、私たちはより多くのブランドにチャンスを提供しようとしています。」
つまり、これまで大手ブランドが独占していた「認知拡大」のマーケティングが、誰でも手軽に実施できるようになったのです。
TV広告の作り方
TV広告を作ったことがない方は、「動画制作にはコストがかかるのでは?」と思うかもしれません。
確かに、動画広告の制作は予算がないブランドにとってハードルが高いですが、Amazonは「Amazon Ads クリエイティブ制作サービス」を提供しており、ここで動画広告を作ることができます。
ただし、このサービスを利用するには、最低約200万円の広告費をスポンサーTV広告に使用する必要があります。
また、TV広告を制作する際は、**CTA(コール・トゥ・アクション)**を入れることが重要です。スポンサーTV広告では、QRコードを広告に挿入でき、視聴者がコードをスキャンすることで直接商品ページへアクセスできます。
スポンサーTV広告のデメリット
スポンサーTV広告とDSPのストリーミングTV広告の違いを評価してみると、明らかな違いとして「ターゲティングの範囲」があります。
DSPでは、次のような高度なターゲティングが可能です。
- 閲覧したが購入しなかったオーディエンスへの広告配信
- 既存顧客の類似オーディエンスへ配信
- AMCで作成したカスタムオーディエンスへ配信
一方、スポンサーTV広告では次のような基準でターゲティングします。
- 興味・関心のあるライフスタイル
- 購買意欲が高いカテゴリーやサブカテゴリー
つまり、DSPと比べるとターゲティングの範囲が広いのです。広告が広範囲に配信されるため、認知度向上には良いですが、DSP広告程の細かいターゲティングはできません。
また、計測できる指標も限られています。スポンサーTV広告では、インプレッション数、広告経由のブランド検索数、商品詳細ページの閲覧数を基準にパフォーマンスを測定できます。
DSPのように「広告を見た人が最終的に購入したかどうか」といった詳細なデータは得られません。
スポンサーTV広告を始める際のポイント
スポンサーTV広告を試す際に、以下の重要なポイントも押さえておきましょう。
1. 十分な予算を確保する
最低予算の制限はありませんが、ある程度の出費が必要です。キャンペーンが十分に機能し、成功するテストとなるように、1日あたり少なくとも100ドル(1.5万円)の予算で開始することを推奨します。
2. CPM課金方式に備える
通常のスポンサー広告はクリック課金(CPC)モデルを採用しており、広告がクリックされるたびに費用が発生します(例外もあり)。しかし、スポンサーTV広告はインプレッション課金(CPM)となるので、広告が1000回表示されるごとに課金されます。つまり、クリックの有無に関係なく広告が表示されるので、しっかりと予算管理を行う必要があります。
3. APIでも利用可能
アドコンソールを使わなくても、APIパートナーを通じて広告運用が可能です。市場には各種ツールがありますが、これらのツールを使えば、より効率的にキャンペーンを運用・トラッキングできます。
Amazonのフィルファネル広告戦略との連携
スポンサーTV広告は、Amazonが推進する上位ファネル広告戦略の一環です。
例えば、大手ブランドはPrime Videoやスポーツイベントに広告を出せますが、中小ブランドはFreeveeなどのプラットフォームで広告を配信できます。
さらに、購買者が商品に興味を持った後は、スポンサープロダクトなどの広告を活用してリターゲティングすることが可能です。
ただし、複数の広告効果をどう測定するか?と疑問に思った方も多いと思います。また、最後の広告だけでなく、一連の広告の影響をどのように評価するのか?という点も気になります。
そこで活用すべきなのが、Amazon Marketing Cloud(AMC)です。 AMCを使えば、スポンサーTV広告とスポンサープロダクト広告がどのように連携して効果を生んだかを分析できます。最後のクリックだけでなく、購買プロセスの中で接触したすべての広告に対して、公平に貢献度を割り当てることができます。
Amazonは今後、フルファネル広告の活用を強く推奨していくと考えられるため、AMCの活用はより重要になってくるでしょう。
AMCはファネル内のさまざまな広告のつながりを可視化できる唯一のツールです。そしてIntentwiseでは、スケールに応じたクエリの作成・スケジューリングができ、結果を簡単にグラフ化できる唯一のプラットフォームを提供しています。