第三部:ヨーロッパで売上を上げるために
さあ、ついにハードワークと投資が報われる段階に入っていきます。ただし、一夜にして成果が出るわけではなく、出品にはまだそれなりの労力が必要です。また、コピー&ペーストではなく、各マーケットプレイスの特徴に合わせて別々に取り組む必要があります。
アカウント設定
販売チャネル / セラープログラム / マーケットプレイス / 販売する商品 を決めると、Amazon EUのセラーアカウントを開設する段階へ進みます。ベンダーの場合は、招待状が送られてきますので、それを受け取ってアカウントを開設する必要があります。セラーであれば、セラーセントラルのアカウントからEUアカウントを開設することができます。アカウントにログインし、メニューバーの「Inventory」から「Sell Globally」を選択し、「Europe」を選択し登録するだけです。Amazonでは現在、同じメールアドレスで異なる地域のアカウントを設定することが可能になったことをお知り置きください。過去に異なるメールアドレスでヨーロッパのアカウントを設定した場合についても、Amazonにアカウントの統合を依頼することができます。Amazonからアカウントの承認を受けるためには、所定の書類の提出が必要です。確認が取れれば、出品の準備は完了です。
出品登録
セラーとして出品登録する場合、セラーセントラル内の『Build International Listings』というツールを使用する方法と、ゼロから設定する方法の2つがあります。『Build International Listings』を用いれば、出品内容を修正したり、あるマーケットプレイスから別のマーケットプレイスへ出品内容を反映させたりすることが、容易にできます。この方法は、1つのマーケットプレイスからすべてを管理することにより時間を節約することができますが、聞こえほどスムーズには機能していないのが現状です。注意点としては、このツールが「あるマーケットプレイス用に登録した出品内容を機械で翻訳する為、購買者の目にネガティブに映る事がある」という特徴を持つことが挙げられます。また価格についても、入力されたソース価格と価格設定ルールに基づいて算出され、通貨換算レートの変動を反映して定期的に自動調整される運びとなります。
ヨーロッパでの出品に関しては、私たちは常に、ゼロから自分の手で設定するアプローチを採用しており、ツールの使用は避けています。その方が、(時間こそかかるものの)より高い精度とコンテンツ及び価格のコントロールが保証されるからです。また、すべての国が同じようなカテゴリーアルゴリズムを有しているわけではないので、自らの目で自社商品の立ち位置をエリアごとに把握しておくことも大切になってきます。もちろん、いかなる場合もツールの使用を推奨できないというわけではありません。特定のマーケットプレイスを基軸とした運営をしたいのか、はたまた個別に対応するインセンティブがあるのか、状況に応じて判断する必要があります。
ブランド登録
商標の登録については、第二部で取り上げた通りとなります。登録番号を取得したら、すぐにこの商標を『Brand Registry』に登録し、対象マーケットプレイスについて自社ブランドのオーナーとしての認定を受けましょう。そうしないと、ブランドオーナーだけが利用できるブランドマーケティング機能を最大限に利用することができず、売上の促進や新しい市場での競争において不利に働いてしまいます。
在庫管理
顧客需要の把握については、第一部の記事で取り上げたような作業がお済みであれば、どの程度の需要があり、どの程度の在庫が必要なのかが確認できたことと思われます。ベンダーであれば、オーダーのイニシアティブを保有していない限り、Amazon側が発注の裁量権を持つこととなり、その場合ベンダーは発注をAmazonに依頼する形となります。セラーであれば、複数のマーケットプレイスでFBAを行う場合、在庫管理の計画に基づいてAmazonのフルフィルメントセンターに在庫を送る必要があります。在庫切れは、Amazonに出品するにおいて絶対にあってはならないことですが、まだ需要を把握しようとしている段階では避けられないケースもあるでしょう。最初のリサーチや計算という“人事を尽くした”なら、あとはAmazonで出品登録をして、需要という“天命を待つ”のみです。予定より早く在庫が必要になった時にすぐに対応できるよう、日頃から売上や在庫のチェックは欠かさず行うようにしましょう。
翻訳・ローカライゼーション
自国のマーケットプレイスでは最適な運用ができているとしても、そのコンテンツを別のエリアに展開するにあたっては、必ず時間的/予算的な計画を持って実行するようにしましょう。この部分をスキップしてしまうと、商品がキーワード検索で上位に表示されず、潜在的な売上を逃してしまうことになります。また、誰もが英語を話すものだとか、機械による翻訳で十分だというような思い込みは持たないようにしましょう。稚拙で意味がほとんどわからない説明を読んで商品を購入する人などいないはずです。十分に注意しないと、表示内容に誤りが生じる恐れもあり、ネガティブなCX、ひいては低評価レビューにつながるリスクもあります。
地域に合わせたのパーソナライゼーション/最適化はもはや必須です。リスティング広告が最大限効果を発揮できるよう、各国の検索に最適化する必要があります。これには、商品の露出度を高めるべく現地の検索用語を利用する必要があります。すべての出品内容を翻訳し、ローカライズするために、その言語に堪能な翻訳者またはネイティブの翻訳者を起用しましょう。なお、アメリカ英語-イギリス英語間にはうまく翻訳できない単語が非常に多くあるため、別の言語と見做してそれぞれに人員を用意すると良いでしょう。
検索キーワードの調査もローカライズのプロセスに該当します。検索キーワードは言語を跨ぐとうまく翻訳されない事が多いのです。言語によっては、直訳では表現できないような商品名も少なくありません。㈱ Picaroでは、翻訳の専門家たちがチームを組み、様々なツールを使ってキーワードリサーチを行います。商品のBP/説明文/A+、ないしはバックエンドに、リサーチで洗い出された有力なキーワードを含ませて翻訳を進めます。当該言語の母語話者に訴求効果の見込める翻訳を行うというのは、機械には代行させ得ない大きな特徴と言えます。
翻訳及びローカライズに関しては、画像/グラフィックス/ビデオコンテンツについても同じように押し進める必要があります。A+コンテンツとビデオコンテンツは国単位で管理されているため、ある国で画像を修正しても、他の国には反映されないことがあります。画像に関してはグローバルに管理されているため、あるマーケットプレイスで画像を変更すると、他のすべてのマーケットプレイスでも変更されます。しかしそんな中、アマゾンは最近、ベンダー/セラーが地域別に画像をアップロードできるツールを公開しました。これはベンダーセントラルで利用可能で、セラーについてはブランドオーナー向けに展開されています。
私たちは、一貫したブランドイメージを維持するべく、まずは基軸となるマーケットプレイスにおいてコンテンツの最適化を行い、更にそのコンテンツをもとにして翻訳やローカライズを行っています。矛盾や情報の欠落の誘因となったり、耳障りに致命的な違いが生じたりする恐れがあることから、コピー&ペーストで書き写さないことにしています。
広告
翻訳とローカライズの項で述べたように、Amazonの広告管理には、そのマーケットプレイスのネイティブスピーカーないしは熟練した翻訳の専門家を起用することをお勧めします。広告運営においても、確かに有力なキーワードを自動で収集・抽出してくれるソフトウェアは数多く存在する一方で、それだけでは重要なキーワードを逃してしまうことも多々あります。予算が限られている場合は、キーワードのリサーチ及びリスト構築の段階までは翻訳家に委託し、そのリストを以てソフトウェアを稼働させるという手順が有効でしょう。(ただし、やはり対象の言語に精通した人員を構えていた方が、キーワードの追加や修正を定期的に実施できたり、ひいては誤った入札にコストをかけてしまうのを防ぐ事ができたりするという点で、より良い選択であると言えます。)結局のところ、担当の人員が持つ対象言語についての理解が深ければ深いほど、リスティング広告や売上にプラスに働くの です。また、最適化されたコンテンツを保有できていれば、広告のより効率的な運用にもつながります。
最後に、このブログをここまで読み進めて下さっているということは、全三部に渡るシリーズで述べてきた内容が、あなたのAmazonヨーロッパへの船出を後押しできているということだと信じたい次第です。Amazon Europeのセラー/ベンダーのアカウント管理について何かサポートが必要な場合は、ぜひ私たち㈱ Picaroにご連絡ください。
免責事項: ここで触れた情報はあくまでも参考の域を逸することはなく、私たちはVAT/製品コンプライアンス/その他の各国特有の販売要件等に関する専門家ではありません。適宜専門家に相談し、必要な場合はAmazonから認証を受けたプロバイダーと連携することを推奨いたします。