2021年10月、Amazon は『検索クエリのパフォーマンス』を発表しました。これは、Amazonブランドと広告主が検索クエリ(被検索語句)のパフォーマンスと買い物客の検索動向を把握することを可能にする、強力な分析ツールです。この『検索クエリのパフォーマンス』は、まだベータ版でありながら、Amazonブランドや広告主の行うパフォーマンス分析に、既に革新的な変化をもたらしています。
アマゾンコンサルティングをしている中で、発表されてからすでに1年以上経過しているのですが、まだまだこのツールを十分理解していない方々も多いので、このブログでは、『検索クエリのパフォーマンス』の仕組みを紐解き、このツールの魅力についてご紹介します。
『検索クエリのパフォーマンス』のアクセス方法
『ブランド > ブランド分析 > 検索クエリのパフォーマンス』の順でアクセスすると表示されます。
*重要:
ブランド分析ダッシュボード及び『検索クエリのパフォーマンス』は、ブランド登録がお済みのセラーのみ利用可能です。なおブランド分析にアクセスできるのは、ブランドのセラーセントラルのアカウント管理者か、アカウント管理者から権限を付与されている方のみとなっています。
Amazon広告における「検索クエリ」とは
“キーワード”が『広告運用者が広告掲載などで用いる単語や単語の組み合わせ』を指すのに対して、“検索クエリ”は『ユーザーが実際に検索した単語や単語の組み合わせ』のことを指します。“検索クエリ”は、広告に関連する“キーワード”とは区別して考える必要があります。(検索クエリがキーワードと重なることもありますが、必ずしもそうとは限りません。)
『検索クエリのパフォーマンス』で得ることのできる情報
『検索クエリのパフォーマンス』では、消費者のオーガニック検索・スポンサー広告のクリック数双方における検索行動に基づいて、各語句のパフォーマンスを確認することができます。
このデータにより、カスタマージャーニーが可視化され、競合他社と比較して自社ブランドを評価することができます。ここまででも既に十分活用に値しますが、『検索クエリのパフォーマンス』の長所はこれだけにとどまりません。
検索ボリュームやランクなどの各データにアクセスすることができるのは当然として、カスタマージャーニーの各段階における重要なパフォーマンス指標(クリック数/インプレッション数/カートへの追加率/購入された数/etc.)となる、検索ファネル(コンバージョン解析データ)を検索クエリごとに確認することができます。またこの各パフォーマンス指標は更に細分化され、検索ボリュームや自社ブランドのシェア、平均価格などの情報を同時に確認することが可能です。
取得できるデータのレポート範囲(参照時間幅)
検索クエリレポートにアクセスすると、まず最初に、データを参照するレポート範囲を選択することができます。データの解析方法に応じて、30週間または7ヶ月までさかのぼることができます。このような検索クエリのパフォーマンスデータは、他では得られない新機能です。
ただし、まだ新しいツールでもあるため、このデータは時間経過とともにレポート範囲が拡張され古いものも利用できる仕様なのか、それともレポート範囲が過ぎたら消去されるのかは不明です。
入札を分析/最適化する際に使用すべきレポート範囲
『検索クエリのパフォーマンス』での分析に最適なレポート範囲は、求めている内容によって異なります。
例えば、過去のデータから分析するのであれば、より大きなレポート範囲を使用すべきでしょう。しかし、最近のトレンドを見るのであれば、より短いレポート範囲を使用した方がより良い洞察が得られると考えられます。
『検索クエリのパフォーマンス』の驚くべき特徴
Amazonの広告主やブランドにとって、『検索クエリのパフォーマンス』はこの上なく有益なツールです。このレポートから、“Amazonが知る検索クエリ上位1000”を直に閲覧することができるのです。
『検索クエリのパフォーマンス』から得られるデータ(一部)
各検索クエリの
- 検索ボリューム
- 特定の時間枠における検索ボリューム
- 自社ブランドのオーガニック/ペイドクリック数
- カートに追加された数
- 購入された数
*その他:クリック数及びインプレッション数における自社ブランドのシェア
そしてこのデータはすべてAmazonの直接提供する一次情報であり、極めて正確なものです。『検索クエリのパフォーマンス』の登場以前は、検索段階でのパフォーマンスデータを取得することは事実上不可能でした。広告プラットフォームからデータを取得するか、サードパーティのツールを使ってASINを逆検索し、ランキングされているキーワードを確認するしかなかったのです。
しかしこの『検索クエリのパフォーマンス』をもってすれば、各クエリのオーガニック/ペイド検索におけるセッションデータにアクセスし、キーワードと検索クエリのパフォーマンスを把握することができてしまうのです。
活用方法
検索クエリのパフォーマンスデータは、消費者が貴社の製品をどのように発見しているかを明確に示しています。オーガニック検索なのか、それとも広告経由なのか、特定することができるのです。このようなインサイトを基に、SEOのためにリスティングを最適化し、またより多くのオーガニック検索を獲得することで、マーケティング戦略を精密に調節することができます。
当社からのプロ向けアドバイス
Amazonの『検索クエリのパフォーマンス』にクリック数やカート追加数が少ないと表示された場合は、メイン画像を改良し、タイトルに目ぼしい検索クエリを追加します。あるいは、最もパフォーマンスの高い検索クエリを含むキーワードの入札数を増やすという方法もあります。また検索クエリデータは総じて、トレンドをいち早くキャッチし、売上拡大や新製品投入の機会を見極める上でも役に立ちます。
(『検索クエリのパフォーマンス』における)
「クエリのスコア」とは
Amazonは、検索クエリを1位から1000位までスコア(ランク)付けしています。しかしこのスコアは、売上やカートに追加された数、クリック数などといった特定の指標ではなく、Amazonがさまざまな要素を組み合わせて作成する集計指標に基づいて定義されます。
Amazonの検索クエリの興味深い点として、スコアリング過程の透明性が非常に高いことが挙げられます。『検索クエリのパフォーマンス』にアクセスすると、右上にAmazonの検索クエリスコアの定義を説明する「指標に関する用語」集が用意されており、いつでも確認することが可能です。
『検索クエリのパフォーマンス』において、もう一つ掘り下げてみる価値があるのは、「検索ボリューム」の規定方法です。検索ボリュームとは、消費者が特定の検索クエリを検索した回数のことですが、これには、消費者が他の商品ページから貴社の商品をクリックした回数は反映されません。結果として検索クエリのパフォーマンスをより正確に把握することができるため、統計として非常に有用性が高いです。
「インプレッション数」とは
検索クエリのインプレッション数とは、消費者がAmazonで検索を行った際に表示される検索結果の数のことです。例えば、消費者が「ランニングシューズ」というクエリで検索し、検索結果の1ページ目に50件の商品があった場合、Amazonはその検索クエリのインプレッション数を50件と記録します。
消費者が2ページ目をクリックすれば、さらに50インプレッション数が記録され、合計100インプレッション数となります(分母=100)。ここで、あるブランドの商品がこれらの検索ページに計4つ表示された場合、そのブランドはその検索に対して4つのインプレッション数を獲得していることになります(分子=4)。
これらをもとにAmazonが総インプレッション数に占める当該ブランドのインプレッション数シェアを算出します。(この場合4%)
「クリック数」とは
クリック数は検索クエリのパフォーマンスに関するより実用的な分析を可能にする指標です。基本的に、あるクエリでの検索後に貴社の製品にアクセスした消費者の数をカウントするもので、トラフィックを正確に測定する指標の1つです。
“ランキングが上がった”ないしは“PPC広告を使用した”といった際、当然製品の露出度及びインタラクションは向上しますが、「クリック数」はそういった変化を定量的且つ真っ先に確認できる指標でもあります。
「カートに追加された数」とは
次の欄には、クエリごとのカートに追加された数が表示されます。ここで報告されるカートに追加された数は、購入に至ったものとは限りません。
Amazonは、購入された数とは別のデータ項目として、クエリごとのカートに追加された数の合計を記録しており、そのクエリで検索した消費者が最終的にカートに入れた商品のうち、何%が貴社の商品であるかを表示します。これもまた、自社商品のパフォーマンスを評価するのに適した指標の1つとなります。
当社からプロ向けアドバイス
カートに追加された数のシェアが少ない場合、検索クエリが想起させる内容に対して、画像/BP/商品説明文の内容が乖離している可能性があります。商品ページまでは訪れたお客様の多くが、一定の興味を持ってクリックしたのちに、カートに入れずに去ってしまわれる場合は、文章を見直し、お客様の誘導されたページがニーズと合致しているか/商品がお客様の課題を解決するものであるかを確認しましょう。
また、在庫が少なくなったことで地域によっては出荷が遅れており、カート獲得機会を逃している場合もあるという点は、重要な点にも関わらず忘れられがちですので気をつけましょう。
「検索ファネル」とは
液体を口の狭い容器に移す際などに用いる「漏斗=funnel」から名付けられた“検索ファネル”は、「コンバージョン解析データ」のことを指します。Amazonは、消費者が貴社の製品をカートに入れてから購入を確定するまでのプロセスを明確に示すシステムを組んでいるので、カートに追加された数と実際に購入された数を切り分けて把握することができます。
特定の製品を狙うような検索クエリは、消費者の購買意欲の高さの表れであり、クリック数→カートへの追加→購入された数という一連の過程を通して最もクリーンな検索ファネルを形成し、一般的に高い購入された数率が見込まれます。
当社からプロ向けアドバイス
カスタマージャーニー全体を通してのブランドシェアを見ることで、売上拡大に向けた最適なシナリオを導きましょう。自社商品が占めるシェア(他ブランドに対する相対評価)を見たとき、購入された数のシェアが、カートに追加された数・クリック数≒インプレッション数のシェアよりも優れているならば、少ない機会からより多くの売上をあげている訳ですから、その商品が高いクエリ関連性及び購入された数率を維持できていることが分かります。
また一方で、露出度を改善すれば更なる売上が期待できるとも言えます。その場合、検索クエリのインプレッション数を増やすことが大切です。十分な検索ボリュームのある検索クエリに関しては完全一致でターゲットできると理想的です。(Amazonから検索ボリュームデータを取得するには、「検索ボリューム」欄をご参照ください。)
商品ページにより多くのトラフィックが集まるよう、インプレッション数とクリック数を増加させれば、カートに追加された数や購入された数のシェアも追従するでしょう。
まとめ
Amazonの『検索クエリのパフォーマンス』の凄まじさを実感していただけたのではないでしょうか。
Amazonから直接検索クエリと購入された数のデータを入手できるのも、Amazonブランドがブランドのシェアを直接把握できるのも、これが初めてです。もしまだ試されていないのであれば、是非この機会に『検索クエリのパフォーマンス』を活用なさってみてはいかがでしょうか。