Amazon「ベンダー締め出し」撤回するも、販売者に危機感

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Amazonは2019年3月4日、ベンダーへの発注書発行の半数以上を停止した。その後、同社はこの決定を撤回したが、この行為は、Amazonへの依存を減らすことで自社のビジネスを守る方法を考えている販売者(セラー)に対する目覚ましのベルになった。

Amazonの卸売りビジネスであるベンダーセントラル(Vendor Central)上にいる数万のベンダーへの発注書発行を停止すると突然決定したあと、3月9日にAmazonは各ベンダーに対してもう1通の電子メールを送った。受け取ったベンダーから米DIGIDAYが入手した電子メールのなかでAmazonは、発注は「一時停止」しただけで、再開するとしていた。

ブランド登録の落とし穴

さらに重要なのは、このメールが各ベンダーにAmazonの「ブランドレジストリー(Brand Registry)」へのサインアップを促していることだ。ブランドレジストリーは、ブランドオーナーやライセンス保有者が、ブランド製品の正規販売者である証拠を提出するプログラムで、正規販売者に対してAmazon上で非正規業者からの保護を与えるものだ。なお、電子メールを受け取ったこのベンダーは、ブランドオーナーではない。ここに落とし穴がある。Amazonの自動発注書発行を利用できるのは、ブランドレジストリーに登録したベンダーだけなのだ。ベンダーには60日の登録猶予期間が与えられている。ブランドオーナーでないベンダーは、セラーセントラル(Seller Central)に振り向けられる。セラーセントラルは、Amazonのサードパーティマーケットプレイスで顧客に直接製品を販売できる場だ(下の電子メール全文を参照してほしい)。

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アマゾンが本格的にビジネスモデルの方向転換を行おうとしている様子です。

まず、アマゾンの仕入れ部門とセラー部門の売上構成比はアメリカでも日本でもセラー部門が6:4くらいでセラー部門が大きいです。

では成長率と採算性という点ではどうなのか。

仕入部門は社員自ら仕入先を探し、在庫し、販売を推進しなければいけないのでその管理コストは大きく、また、競合他社との価格競争もあり、適切な採算性を常に確保をするのが難しい構造。また、人的リソースも十分ではないために、Top tier(上位100社程度)のメーカーとはある程度マネジメントとコミュニケーションが取れるが、Tier3位になってきてしまうとコミュニケーションが取る時間が限定的になり、売上拡大と利益改善が進めにくい。

一方、アマゾンのセラー部門はどちらかというと、出品者の方々にインターフェイスとAIを使って各種アクティビティーをやっていただくというモデルなので、出品される数と社内リソースの曲線は平行ではなく、出品者数の成長率の方が圧倒的に多い。そして採算性については、セラーの場合は確定された手数料が入る。また、FBA(Amazonが倉庫保管、配送を請け負うサービス)を使うセラーが多く、その物量による圧倒的なコストメリットや、交渉力の作用で、配送手数料でもある程度の収益がある

というのが前提にあると思います。その中で、

  • 収益率の不安定な仕入ビジネスよりも、セラービジネスによって手数料と配送代行料でしっかりと収益を上げたい
  • 収益率の低い、仕入モデルのTier3以下をどうにかしたい
  • 仕入(ベンダー)に対しては、ブランドレジストリー(中国越境ECでいうところの授権書?)の要求をすることで、メーカーもしくは一次卸のみを仕入部門で扱い、2次流通からの仕入れは極力行わない
  • ブランドレジストリーを推進することで、サイトに溢れている模倣品、粗悪品の出品を排除する

などといった思惑があるのでしょうね。

当社代表のアマゾンジャパンでの10年間のキャリアは、全て仕入部門でのものだったので、このニュースには少し寂しい想いがあるようです。