アマゾンでの販売方法には、大きく2つのモデルがあります。一つはベンダーモデル、もう一つはセラーモデル。
ベンダーモデルは、商品をアマゾンに仕入れてもらい、アマゾンがアマゾン内外でのマーケティングも行い、アマゾンが販売主として顧客に商品を販売するというモデル。
一方、セラーモデルはメーカーがアマゾンへ店舗を出し、メーカーが自らアマゾンサイト上で商品を販売するモデルですが、今日のテーマはベンダーモデル。
ベンダーモデルの方向性は、この10年で大きく変わってきております。特に国内ではBrand Consulting Service(海外ではAVS)のサービスが立ち上がった2017年からでしょうか。
(実はAmazon JapanでBrand Consulting Sevice(BCS)を立ち上げのプロジェクトをリードしていたのが、当社の代表の下平で、この時の背景や経緯をご説明した方が、詳細が分かりやすいのですが、かなり細かな話になるので、今回は割愛させていただきます)
一般的な販売、卸、メーカー間のビジネスにおいて、特別な議題がないものの定期的に顔を合わせる、近くに来たので挨拶を。年始の挨拶をといったコミュニケーションは過去から非常に重要であり、多くの場合ではビジネス拡大のための有効な手段として活用されていましたし、日本ではまだ多くの企業がこのコミュニケーションを中心としてビジネスを拡大するという手法を取っているかと思います。メーカーと卸業者の方は、バイヤーの元に頻繁に通い、ビジネスのupdateをしたり、たまには食事会、接待などを通してコミュニケーションを深めてきました。確かにコミュニケーションが深くなれば、スマホの番号を教えてもらえたり、ルールの範囲内で優遇してもらえたりと、もしくは売上に困った際には、「今月、これだけ、特価で出すので何とか購入してくれないか」といった少し強引な依頼も聞いてもらえることも多かったと思います。
しかしながら、現在のアマゾンは、このコミュニケーションによるビジネスの拡大という手段はどんどんなくなってきております。
まず、現場レベルで言うと、vendor managerの電話番号は名刺に記載がありませんで、ベンダーマネージャーと会話をすることがかなり難しくなってきました。(10年、5年前などは、vendor modelではリーダーとなるvendor managerの電話は朝9時からずっと鳴っていました。留守電話にメッセージが100件以上になっているというケースなどは普通で、某vendor managerは電話に出れないのでずっと受話器を外したままでした。)
アマゾン社内でもベンダーモデルのリーダーだったvendor managerの責任と権限の範囲が狭まり、Automationと、Self Serviceを中心としたメーカーに対してのサポート体制が、BCS/AVSをコミュニケーションパスとした組織体制でどんどんと構築され、アマゾンでのビジネスを拡大するfactorが、過去にあったvendor managerと中長期的なリレーションシップを構築するというものではなく、提供されたself serviceのtoolをどう理解し、習熟し、最大活用できるかどうかに変わってきています。
メーカー、卸サイドのアマゾン担当者は、アマゾンにおけるSales、マーケティング、在庫管理や物流オペレーションなどの多数の役割を十分理解した上でこれらのtoolと向き合う必要があり、単なる営業や、アカウントマネージャーではなく、ECのスペシャリストであることが要求されてきています。そして、Amazonは圧倒的なデータドリブン企業ですので、メーカー、卸サイドのアマゾン担当者は、アマゾンのビジネスを拡大するためには、優れたデータ収集、分析能力も要求されます。また、、アマゾンのシステムは毎日変わるので、アマゾン担当者は日々それらの情報を自らupdateし続ける必要が出てきています。更に、アマゾン担当者は、これらの知識や経験を軸に、アマゾン担当者から能動的にAVSに対しての作業依頼をする必要が出てきます。
メーカーのアマゾン担当者が十分なスキルと経験を持ち、self serviceのtoolを自ら操り、AVSに対して能動的にアクションの依頼をできるようになると、将来的にメーカーの担当者と、Vendor Managerがコミュニケーションを取るのは、年間の商談合意、四半期ごとの商談合意、大きな問題が起こった際の緊急対応だけになると想像しています。
アマゾンは、メーカーや卸の環境を考慮したスピードではなく、自らが信じる道を最速で進んでいきます。そこに対してメーカーとして不平を言っていてもAmazonは何も変わらず、そのような大きな時代やビジネスモデルの変化に、どう追い付いて行けるのかと考えていかないと、一瞬で置いて行かれていくリスクがあるかもしれません。
アマゾンがどこを見ているのかを十分理解した上で、アマゾンとどう付き合っていくのかを考えていくタイミングなのかもしれませんね。