第二部:ヨーロッパでの事業運営
ヨーロッパでの展開を考えているセラーやベンダーは、Amazonの要件だけでなく、イギリス及びEUの地域別販売要件を把握し、これらに完全に準拠していなくてはなりません。また、こうしたマーケットプレイスで事業を行う場合のコストや 実現可能性を、正しく評価することも重要な課題です。
フルフィルメント
ヨーロッパへの販売においては、もし『ベンダー』になるよう招待を受け、実際にこれが最適なチャネルであると判断したということであれば、特にフルフィルメントのプログラムを吟味する必要はないでしょう。この場合、ベンダーのアカウントを設定するだけで、Amazonから注文が入り、それに順次対応することになります。
一方、『セラー』に関しては、FBA(Fulfilment by Amazon)、MFN(Merchant Fulfilled)、SFP(Seller Fulfilled Prime)のうち、どの方法で注文を管理するか選択する必要があります。MFNを選択した場合、米国から直接発送することは避け、欧州の3PLを検討してください。カテゴリーによってはこの方法も可能ですが、税関での遅延のリスクが高く、その結果、ネガティブな顧客体験やセラーのフィードバックへと繋がり、一部のセラーのパフォーマンス指標を満たせなくなる可能性があります。長期的な視点でSFPを計画しているのであれば、出荷要件を満たせる3PLを見つけるようにしましょう。
最も簡単なルートは、FBAを選択することです。実際、国際的に見ると、ヨーロッパで事業を開始するほとんどのセラーがFBAを選択しています。なおヨーロッパでは、FBAに関して更に3つの異なるタイプのセラープログラムがあるので、以下ご紹介致します。
1. 欧州フルフィルメントネットワーク(EFN)
EFNは、ヨーロッパで販売するセラーが、自社の在庫をローカルフルフィルメントセンターに保管し、そこから商品を出荷して他のヨーロッパのマーケットプレイスからの注文に対応することを可能にします。例えば、スペインのAmazonからの注文を、イギリスの在庫から発送することができます。(※)
※以前は、FBAのEFNプログラムに参加しているセラーであれば、EUのどのマーケットプレイスからも注文を受け、イギリスの在庫から出荷することができましたし、その逆も可能でした。Brexitを経てイギリスがEUの一部でなくなり、この仕組みの利用も一度は「EU諸国間でのみ可能でイギリス-EU間では不可能」となりました。しかし、Amazonは最近イギリス-EU間のEFNを再導入し、現在は申請をすることで利用できるようになっています。(「所定の規格を満たしていること」「135ユーロまたは122ポンドを超えないこと」などが条件です。)
2. マルチカントリー・インベントリー(MCI)
MCIであれば、FBAに登録した在庫をヨーロッパ内の任意の国(複数選択可)のAmazonフルフィルメントセンターに配置することが出来ます。これは、事業展開の足がかりに少数のマーケットプレイスを対象としているセラーに有用です。例えばイギリスとドイツ(その他EU圏のマーケットプレイス)に在庫を持つことで、イギリスとEU圏の間で在庫を管理するソリューションとして活用することができます。
3. EU内自動分配(Pan EU)
Pan EUであれば、ヨーロッパのすべてのマーケットプレイスを対象に販売することが可能です。セラーが在庫をEUのフルフィルメントセンターに送ると、Amazonが顧客の需要に合わせ、追加コストなしで、EU加盟国のフルフィルメントネットワークに再分配してくれます。英国を除いた複数のEU諸国に販売するセラーに有用です。
通貨
ヨーロッパで販売する場合、イギリスにおいては英国ポンド(GBP)、そのほかの欧州諸国においてはユーロといったように、2つの異なる通貨で取引することになります。外国通貨での取引は、米ドルまたは他の自国通貨に戻すときに損失ないし利益を発生させ、そこに更に外国為替コストが発生します。資金を受け取るには、自国の銀行口座を使用することもできますが、その場合、手数料が高くなったり、為替レートが不利になったりするのが一般的です。一方、現地の銀行口座として機能して、後に資金を自国の口座に送金してくれるサービスがあるので、それを利活用することで手数料を抑えることができます。
製品コンプライアンス
セラー/ベンダーであるならば、製品カテゴリーの法的要件をよく理解し、国別およびEU全域のそれに従って販売の運営をしなければなりません。製品コンプライアンスは、国とEUレベルで適用されます。企業が販売する際カテゴリーに応じて遵守しなければならないガイドラインが、EU全域ないし国ごとに設置されている場合があります。例えば、食料品には販売する市場の言語で書かれたラベルが、電子機器や玩具にはCEマーキングが必要であり、また電子・電気機器の廃棄にはWEE法の規定があります。加えて、イギリスやEUの「消費者の権利」は、アメリカやその他の国際市場とは異なるので、あらかじめよく理解しておくことをお勧めします。
消費税・付加価値税
必ず税務に関するアドバイザーを付けて、欧州各国における法的納税義務について理解を深めてください。販売対象とする市場がVAT登録が必要地域か否かを特定や登録のサポートをしてもらいましょう。なお登録するセラープログラムの種類や、在庫を保有する国によって、詳細は異なります。さらに、HMRC(税務署)へのVAT申告の管理に関する継続的なサポートや、イギリスやEUで商品を輸入し関税を支払う際に必要となるEORI番号の申請もサポートも受けることができます。
カスタマーサービス
各マーケットプレイスのカスタマーサービスをどのように運営するかを決めましょう。FBAを使用する場合は、カスタマーサービスの質は低下しますが、問い合わせは依然として入って来ます。企業によっては、需要と継続的なサポートが必要であるかどうかを評価する目的で、まずはフリーランスの翻訳者のサポートを使用して、アドホックベースで応答を管理することもあるでしょう。 機械による自動翻訳ツールを使用して問い合わせに対応する企業もありますが、文法に欠陥が散見されたり、意図していない意味が伝わったり、ひいてはマイナスのCXにつながる危険性も潜んでいるため、あまりお勧めできるものではありません。
国際輸送
国際輸送を管理するには、輸送業者を選定/委託する必要があります。選択肢となる業者はたくさんあるので、相談する際には、税関の管理を代行してくれるかどうか、運賃/保険料/関税/付加価値税/その他の追加料金を含むすべての輸入コストについて明示してくれるかどうか等を確認するようにしてください。
3Pロジスティクスプロバイダー
セラー/ベンダーの方々から、「ベンダーとしてAmazonに販売したり、セラーとしてFBAで販売する場合において、イギリスやヨーロッパ本土に在庫を保有する必要があるのか」という質問が多く寄せられます。Amazonは、ベンダー側では少しずつ発注しますし、またセラー側ではAmazonに送り込んで保管できる数量に在庫制限を設けています。そのため、受注オペレーション/需要増への対応/返品管理等に備えて、そのマーケットプレイス近辺にいつでも使える在庫を抱えておくことをお勧めします。
商標登録
ブランドオーナーであれば、ヨーロッパを対象とした商標登録を忘れずに行ってください。ブランド登録は、EU全域または市場単位で行うことができます。EU加盟国の数を考えると、EU全域単位で登録した方が結局は安く済みます。ただし、イギリスは今やEUの一部ではない為、EUの商標を新たに登録してもイギリスは対象外となってしまうので、イギリスだけ別途商標登録をする必要があります。
さて、ここまででオペレーション面について理解を深めていただけたと思いますが、もしまだ迷われているようでしたら、当Amazon Europeブログシリーズの第三部にて、商品のリスティング及び売上向上に関するヒントをご紹介致しますのでそちらも併せてご参考にしてください。