(お問合せから)中国の越境ECで気をつけるべき事は何でしょうか?

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目次

前職で中国越境EC最大手であるネットイースカオラの日本法人代表をさせていただき、且つ現在も日本メーカーの海外進出のサポートをさせていただいています中で、いくつか思い浮かぶことがございますので、複数を記載させていただきます。

1,国家間の政治・紛争、対立といった民間企業、個人ではコントロールができない事象によるビジネスの停止、ルールの変更、不買運動などの発生のリスク。実際にファーウェイの商品をアメリカや日本といった多くの国が購入しないという判断をしましたが、同じようなことが日本メーカーの商品に対しても発生するリスクは大きくあります。もちろん中国以外の越境ECの対象国となる国々も同様ですが、日本と中国は現時点では同盟関係ではありませんので、他国と比較してこれらのリスクは高いと考えます。

2,中国越境ECというと、保税区モデルと一般貿易の2つが存在しますが、2018年12月時点で脚光を浴びているのは保税区モデルであり、CFDAが不要、関税率が低い、通関までの時間が短いという3つのメリットがありますが、中国政府がこの保税区モデルの法律を変更する可能性があること。 実際、2019年1月1日から越境ECに関わる法律が急遽改定されることが発表されましたが、その際に、CFDAの取得が必須になる可能性があるという話(噂)があった結果、現時点で中国の販売platformは「将来的にCFDAの取得が必須になる可能性があるので、現時点でCFDAを取得していない商品は扱いたくない」といった反応になっています。

3, 特定の商品だけが極端に売れて、それ以外の商品全く売れないことがほとんどですので、一本足打法になることが非常に多い。該当商品は日本国内での販売数よりも多くの実績を上げることが可能ですが、中国の需要を満たすためには投資をして生産ラインの再構築が必要になることもあります。しかしながら、これらの需要も「流行り」であることが多く、昨日売れていた商品が、今日から全く売れなくなるということも頻繁にあります。またサンプルとして適切ではないかもしれませんが、2017年の3月に、「3.15晩会」でMujiとフルグラが名指しで叩かれたことで、翌日から全く売れなくなったということはまだ記憶に新しいかと思います。

4, 新商品の販売。Aという商品が爆発的に売れていたとして、その後継機種のBを出そうとしてもBがうれるかどうかは不明です。中国の消費者はAが売れている=みんなが良いと言っているのであれば、Aが欲しいわけで、メーカー都合で生産されたBにはその時点では全く興味はありません。

5, 日本国内の価格や流通。日本国内の流通が整理できておらず、どこからでも商品を仕入れることができてしまっていたり、日本の市場売価と中国での販売価格の差額が適切ではない場合は、意図しない場所から商品を仕入れ、意図しない価格で現地で販売されてしまうことが多々あります。中国からのインバウンド(ソーシャルバイヤー)などが大量に日本で安く商品を仕入れ、中国のTaobaoなどで少しだけ利益を上乗せして販売しているケースなどがそうですかね。また、中国で正しく販売を開始できたとしても、中国の消費者はAmazon Japanといったサイトでの販売価格と送料を加味した正味の価格で比較検討をし、安ければAmazon Japanから個人輸入することは当たり前です。

6, メーカーの慢心(勘違い)。前職で中国越境EC最大手であるネットイースカオラの日本法人代表をさせていただき、且つ現在も日本メーカーの海外進出のサポートをさせていただいていますが、多くの方々から「日本製だから」「日本で売れているから」「技術力がある」ということをおっしゃられる方々が本当に多いですが、残念ながらそれは自分たちの幻想です。どんなに日本で売れていようが、中国の消費者が日本の消費者と同じ考えでも、文化でもなく、何にいくら消費するのかの価値観も異なります。日本で売れているのに中国で売れていない商品というのは数えきれないくらいあるので、今回は逆の日本では売れていなかったのに中国で売れているものとして、ライオンの100円程度の歯磨き粉(ホテルの簡易的な歯ブラシに付属しているような商品)、馬の油でできたシャンプー(箱根の温泉とかに置いてある商品)があります。日本人からすると、「どうしてそんなものが?」と少し笑ってしまう部分も正直ありますが、それほど日本と中国の消費者では感覚が違うのです。それにもかかわらず、「日本で売れているから」というだけで、中国でも売れていると考えるのは勘違いです。

中国で売るには、覚悟、戦略、投資、国内と現地の適切なパートナーの全てが必要です。投資もリソースも、苦労も大きいですが、成功すれば大きなリターンがある市場です。

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